「僕、ちゅら。」

僕、ちゅら。 カエルじゃないよ
まだ目が見えなかった僕は
僕を産んでくれたお母さんに咥えられて
兄弟たちと一緒に引っ越してきた。

ぽかぽかとお日様がにっこり笑ってるこのおうちは
安全であったかいからと
お母さんが選んでくれた。

すこしずつまわりの様子が見えるようになってきたある朝、
目が覚めるとお母さんがどこにもいなくて
とっても淋しくなった。

一生懸命お母さんを探した。

兄弟たちはそんなことお構いなしで
のんきにスヤスヤ寝息を立てていた。

そんな兄弟たちに
無性に腹が立って
ひとりでお母さんをさがす決心をしたんだ。

あっちこっち歩き回って
僕がやっと通れるぐらいのスキマをみつけた。
中をそっと覗いてみたけど
まっくらでなにもみえなかった。

こわかった。

でも、
僕は男の子だから
強くなってお母さんを迎えにいくんだ。

勇気をふりしぼって
僕はそのスキマに左手をちょっとだけ入れてみた。

ひんやりと冷たい空気が僕の肉球に触れた。

今度は最大級の勇気をふりしぼり
左手を伸ばしてみた。

次に左耳を押し当ててみた。
何も聞こえなかった。

よし!

と自分に掛け声をかけて
目をつぶったままあたまを中に入れてみた。

しばらくじっとしていた。

そっと目を開けると
だんだんとなかが見えるようになって
すこし安心した僕は一気になかに飛び込んだ。

思ったより広くてさっきよりあったかい感じがした。

僕が入ってきたスキマからは
おひさまがつくるキラキラ光る帯ができていて
僕は長い間
見とれていた。

いつのまにか帯がなくなって
ブルッと寒気を感じて飛び起きた。

キラキラの帯の中でどうやら僕は眠ってしまったらしい。

キラキラの帯が消えたココは
ひんやりと冷たくてシンとしていて
怖くなって
僕はおもいっきり大きな声でお母さんを呼んだ。

「おかあさん、おかあさ~ん!!」

ずっとずっと呼び続けた。

「おかあさん、おかあさ~ん!!」

でも、お母さんはどこにもいなくて
泣きながらそのまま眠ってしまった。

僕はもしかしたら迷子になってしまったのかな?

次の日も
その次の日も
僕は声がかれるまでお母さんを呼んだ。

もう二度とお母さんにも
だんごのように一緒にまあるくなって眠った兄弟たちにもあえないのかな。

悲しくて悲しくて
お母さんに会いたくて・・・

もう、絶対悪いことはしないから
ちゃんといい子でお留守番するから
言いつけもきっとまもるから
お母さんに会わせてください。

泣きながら
神様にお願いした。

突然、一気にたくさんの光が目に飛び込んできて
僕は思わず目をつぶった。


そっと目を開けてみると
目の前に見たこともない女の人が座っていて
僕の方を見ながら
いっぱいいっぱい”まばたき”をしていた。


あとで聞いたんだけど
“まばたき”は猫の世界では”キス”なんだって。
愛情表現なんだって。

そんなことはしらなかった僕は
この「キス攻撃」ですっかり安心して
逃げるフリはしたけど
捕まえてもらってほんとはホっとしたんだ。

おいしいご飯をたくさんもらって
お水もガブガブのんで・・・
そのまま
このひだまりがいっぱいのおうちの子供になった。

時どき、
あたらしいお母さんたちは
僕にいろんないたずらをするけど
お母さんたちがうれしそうにニコニコわらってくれると
僕も嬉しくてたのしくなるし、
僕に良く似た「ろくおじちゃん」が
あとでいっぱい遊んでくれるから
ちょっとだけ
がまん、がまん。


僕を産んでくれたお母さんや
一緒に生まれた兄弟たちにも
とっても会いたくなるけど
あたらしいお母さんや
ろくおじちゃんたちは
きっと僕がいなくなったら淋しくて泣いてしまうんじゃないかとおもって
僕は
そのことは言わないって
あのとき
暗闇のなかでお願いした神様に誓ったんだ。


以上はあくまでねこもりやの想像です。
「ちゅら」はねこもりやんちの元納屋で
“みゃぁみゃあ”と
必死に泣き続けていました。
きっとねこもりやんちの敷地内に親猫は隠したのだとは思いますが
兄弟たちは見当たりませんでした。
もちろん、親猫も。
決して子育てを放棄しないといわれる猫のことゆえ、
何らかの事情で元納屋(現倉庫)に入り込んだものと思われます。
追伸:「ねこもりや」という名前は実家の屋号、「ねこもり」から来ています。
「ねこもり」とは、
“猫がいつのまにやら集まってまどろみ、
篭るほど、ぽかぽかとあたたかいひだまりができる場所”ということらしく・・・
猫篭り(ねこごもり)→猫もり→ねこもり
その名の通り、
まさに、我が家はぽかぽかひだまりに猫たちが大集合でございます。

りきたんのお部屋 殺される命。救われる命。自分と同じ命。

抜粋:ペットショップでこれから犬を買おうと思っている方がいらっしゃったら、
どうか、ここから一頭、幸せにしてあげてください。
再び追伸:そんなこんなで更新も訪問もお礼参りも滞っております。
ご容赦を。

2 comments Add yours
  1. もしかしたら母猫が置いていったのかもしれませんね。
    このおうちなら大丈夫、飼ってもらいなさいって。
    他の兄弟はまた別の家に・・・。
    友達の家で数年前子猫を連れた母猫が何日か続けて現れて・・・数日後、子供だけがやってきたんだって。
    きっと、野良の暮らしは大変だら飼ってもらえそうな家を探して様子を見ていたのかもね?って。
    その時の子猫大きくなって最近は後輩子猫が現れるらしい・・・^^;

  2. ちゅらちゃん、さみしかったね・・・がんばったね・・・
    おかあさんはきっと、猫たちの間で噂のねこもりやさんちを探したんだね
    そこに行けば安心だって、知ってたから
    ちゅらちゃんがんばったね
    勇気のあるいい子だね
    あたらしいお母さんのところにいれば幸せだね
    いい子だね。よかったね。
    おかあさん、いまごろ安心してるよ
    そこは楽園。
    ありがと。

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