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1歳と半年の縷々が、
半年前の出来事を覚えているものかどうかはわからないけど、
たしかに縷々は、
マンションの扉を開けた途端、部屋の奥に駆け込んだ。
そこに確かにあるはずの”あの気配”はなく拍子抜けするほどの静けさばかり。
”とら”と”モモ”の不在に確信はないけど
なんとなく感じたのか、部屋に入るなり、
”とら”と同じ毛色をしたトラのぬいぐるみをきつく抱きしめた縷々。
部屋中のあちらこちらに並ぶ、”とら”と”もも”の写真を見つめる縷々の瞳は、アンパンマンを見つけた時より真剣で真摯だ。
家族以外の誰にも、縄張りを主張して憚らなかった彼らが、
はじめて許し、譲った最愛のパパの膝の上とお布団。
「安心して。僕らはもう苦しんでなんかない。
僕らはいつもそばにいるよ。縷々といっしょにここにいるよ。」
”とら”と”もも”が、縷々に託したのは、
暖かい膝の上とお布団と、
他でもない彼らが一番愛した人たちの愛する者を失ってしまった悲しみに沈むこころ。
「ずっと一緒にいるよ。」
ワールド動物病院の先生の言葉。
「動物の愛情は人間が思う以上に深い」
片言の人間語をようやくしゃべり始めたばかりの縷々には
きっと彼らの気や感情や愛情を強く感じられる何かがあるにちがいない。
うらやましいなー
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