桜の記憶 ~その弐

 

19歳の姉の
「私、会社に行かれなくなる」
などという
ばかげた言葉を
鼻白む思いで聞きながら
その一方で
「この人はいつだってそうだ」

大切に大切にくるむようにして育てられた
長女特有の身勝手さを思う。

母は動き出した。
生きたまま死んでしまったかのような父を叱咤するでもなく
ましてや
軽蔑するでもなく・・・
ただただ
母は
強くなった。

戦後の日本の復興は「おんな」のちからだったことを
改めて思い起こさせる母の強さだった。

母は働いた。
一時の半分ほどになった
細く小さくなったからだで
昼間は「賄い」に
夜は、当時ちらほらとでき始めた24時間のコンビニで。

その春、
妹が入学したばかりの中学校。
常夜灯に
煌々とまばゆいばかりに白く浮かび上がる満開の桜。

その光景は
すこし不気味で
とても恐ろしく見えた。

「桜の花」は
晴れやかな思いで見上げるからこそ美しいのだと知った16歳の春。

「なんにもなくなったわけじゃないでしょ?私たちがいるでしょ?」
後に母は
「あなたの言葉に我に返った。」

笑いながら打ち明けた。

桜

 

サンタさんのさくら – 写真共有サービス 「写真部」 byGMO

2 comments Add yours
  1. ねこもりやさんって繊細な人なんやね(^?^)
    家族のことを描くって繊細なんやと思う。つながりの深さとか表すのって、ねぇ。意味わかる?わからんか(笑)
    でも、そーでないと描ききれんけー。
    宇部弁丸出し♪

  2. なんだか、ドラマティック^^
    お母さん、格好イイ!
    ねこもりやさんが、いい人だってことが、お父さんやお母さんの描き方で、伝わってくるねぇ?w
    ポポ、クマは匂いかぐだけかいで、とっとと離れていっちゃいました^^;
    食べないみたい^^;

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