僕の名前は「くり」。

僕の名前は「くり」。

 

土砂降りの七夕の日の朝、

ひと粒の永遠の星になった。

 

僕自身、

あまりにも思いがけないことで

僕が頑張りすぎて

最後に、

もう一度、起き上がろうとしたことが

お母さんに重い十字架を背負わせてしまったみたいで

ちょっとだけ後悔している。

 

一緒に暮らした「ろく」は

わかりやすい性格だったから

何度も何度も

病院通いをしていて

注射嫌いの「ろく」は

とても嫌そうだったから

僕はほんの少し

ダルいのを我慢した。

 

それに気付かなかったことを

お母さんはとても悲しんでいるけど

お母さんのせいじゃない。

 

僕の演技力が凄すぎたんだよ。

 

お母さんのせいじゃない。

 

 

屋根裏で

にいちゃんと弟と一緒に生まれた僕は

突然、帰ってこなくなった

僕と兄弟を生んでくれた母さんを

ずっとずっと待っていた。

 

真っ暗で心細くて

おまけにお腹がすいて

母さんが帰ってこなくなって何日目かの夜、

甘えん坊だった弟も

いつも励ましてくれたにいちゃんも

眠ったまま目を覚まさなくなった。

 

にいちゃんが冷たくなった次の日の夕方。

 

うとうとしていた僕は

ひょいと大きな手で抱え上げられ

四角い箱に入れられた。

 

僕は

どうしようもなく眠くて

そのまま眠ってしまったようだ。

 

なんとなく

ふわふわとゆりかごに揺られているようで

気持ちよくって

あったかくって

帰ってきてくれた母さんに

優しく抱っこされてる夢を見ていた。

 

 

実は、この頃

まだ僕にはほんとの景色は見えていなかった。

あとで僕を育ててくれたお母さんが

いろんな人に話してるのを聞いたけど

「まだ目もあいてなかった」ってことらしい。

 

だから、

あの時の大きくてふわふわであったかい手が

お母さんの手だったことは

僕がもう少し大きくなって

ちょっぴり賢くなった時に気付いたんだ。

 

あの日から9年と数か月。

 

僕は

とてもとても楽しかった。

 

初めて一人でトイレでおしっこした日も。

炬燵の蒲団と天板の間に挟まれて

汗ぐっしょりになった時も。

どら猫に襲われて「ろんぼ」おばちゃんに助けてもらった時も。

トイレに落ちた時もお風呂にダイブしたあの時も。

おじいちゃんの蒲団で一緒に眠った夜も、

タンスに閉じ込められた6時間も。

そうそう!

裸ん坊の「るるちゃん」と僕のしっぽで遊んだあの夏の日もね。

 

いつもいつも

楽しくて楽しくてしあわせだった。

 

お母さんが「くりぼうじゅん(坊主)♪」と

僕の名前をニコニコと楽しそうに呼んでくれるたびに

しあわせな気持ちになった。

 

だから、

あの日も

お母さんの呼ぶ声に応えようとしちゃったんだね。

 

ありがとう、お母さん。

僕を愛してくれてありがとう。

 

僕は

時に夜空で見守るひと粒の星になり、

時にお母さんの傍にそよぐ風になるよ。

 

あ、そうだ!

忘れてた!

 

キラキラと甘い砂糖菓子のような七色の虹の橋のたもとで

「ろんぼ」おばちゃんと会えたよ。

 

虹の橋の向こう岸には

みーんないるんだって。

みーんな元気だってよ♪

 

ありがとう、お母さん。

 

お願いだから

もう泣かないで。

 

僕はいつでもそばにいるよ。

 

たのしかったね。

僕を愛してくれてありがとう。

 

また会おうね♪

まったり”くり”

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